1. はじめに: 「個人の成長」と「目標管理」を結びつける試み
これはコネヒトアドベントカレンダー2024の11日目の記事です。
本記事は、キャリア形成や目標達成支援に悩むマネージャー を対象としています。チームメンバーの成長支援と組織の目標管理をどのように結びつけるかに課題を感じている方に向け、実際の運用事例として「個人のバックログ管理」を用いた取り組みを紹介します。
具体的には、以下のような課題を感じている方に役立つ内容です。
- メンバーのキャリア志向が把握できていない
- 成長の方向性が見えず、次に支援すべきステップが不明確
- 日々の業務の中から成長実感を感じてもらうことが難しい
- 組織の目標と個人のキャリア形成を結びつける運用例を知りたい
私はコネヒトで働くエンジニアリングマネージャーとして、組織の戦略と個人の成長を掛け合わせで、より大きな成果を生み出すことを重要なテーマと考えています。この問題に向き合うため、プロダクトバックログの考え方を取り入れ、目標管理と成長支援の両立を目指すアプローチを試行錯誤しています。
長期的なビジョンや中長期的なゴールを設定し、その達成を目指すバックログ管理 は、目標管理とキャリア形成を結びつけるうえで適していると判断しました。また、メンバーとキャリア形成を話す上で 個人を「プロダクト」として捉え、成長の方向性確認する ことで、遊び心を持ってキャリア志向を話せるようにしたかったことが理由の一つです。
2. 運用のプロセス: 個人の成長を支えるフレームワーク
プロダクトバックログ管理を個人の成長支援に応用するにあたり、長期・中期・短期の3つの視点 を以下の図のように整理をしました。この視点は、個人のキャリア形成と組織の目標管理を効果的に結びつける重要な要素です。
個人の成長を支えるプロダクトバックログ管理のフレームワーク
カテゴリ | 定義 | 活用方法 |
---|---|---|
プロダクトビジョン (長期:3〜5年) |
キャリアにおける長期的な方向性や理想の状態 | 定期的に中長期的なキャリア志向を可視化し、道筋を立てる |
プロダクトゴール (中期:6ヶ月〜1年) |
ビジョンを実現するための中長期的な目標。インクリメンタルに進めるため、バックログを作る | 半期の目標を立てるための判断材料にする |
スプリントゴール (短期:1ヶ月) |
毎月設定する短期的な取り組みの目標 | 毎月のふりかえりで検査・適応を行い、業務上の成果と個人の成長を対話する |
例えば、以下のようなアウトプットが作られるイメージです。*1
例 | |
---|---|
プロダクトビジョン | 「技術力だけでなくリーダーシップも発揮できるエンジニアとして成長し、チームの成長を牽引できる存在になることを目指す」 |
プロダクトゴール | 「次の1年で主要プロジェクトの技術リードを担当する2回経験し、リーダーシップを実践する」 |
スプリントゴール | 「現状のアーキテクチャの課題をリストアップし、改善策を考える」 |
このフレームを元に、全体の流れとしては以下のような取り組みを進めています。
- コネヒト所属に依存しない、長期的なキャリア志向を考える
- コネヒト所属を踏まえて、マネージャーと中期的な目標を設定する
- 1ヶ月ごとの短期ゴールを設定し、マネージャーと検査・適応をする
2.のステップを丁寧に進めることで、会社の求める成果と個人の成長を繋げるように仕掛けています。
自己分析を行い、ビジョン/ゴールを決める
メンバーには、まずは個人のプロダクトビジョンを埋めることから始めてもらいました。 以下のような設問を用意し、自己分析を促すことで、長期的なキャリア志向を考えるきっかけを作りました。 ここではコネヒト所属、有無関係なく自分のキャリアについて考えることを強調しています。
- 過去の振り返り
- 過去数年間でどんな経験をして、どんな成長をしたか?逆にやり残したことは何か?
- 自分の強み、特徴は何か?逆に苦手なことや過去のフィードバックで印象に残っていることは?
- 人生や仕事上で大事にしていることは?
- 長期的な目標の設定
- バックキャスティングで考える
- 2~5年のうちに成し遂げたいことは何か?
- ワクワクすることは何か?
- それはなぜ?
- フォアキャスティングで考える
- 過去の棚卸しを見て、2~5年のうちにどんな価値が生み出せそう?
- ロールモデルや憧れる人は?
- それはなぜ?
- バックキャスティングで考える
個人のプロダクトビジョンを設定した上で、会社の目標達成との掛け算になるプロダクトゴールを設定します。 もちろん、必ずしもプロダクトビジョンに直結する目標を置けるわけではないですが、キャリア志向を把握しておくことで、今後の機会提供の方法を考えられるようになっています。
このフレームワークで、半期ごとの成果を単なる「点」としてではなく、「中期的な視点」を踏まえて「線のコミュニケーション」が取りやすくなりました。 このプロダクトゴールを設定したうえで、1ヶ月で目指すスプリントゴールを決め、1on1や振り返りを行なっています。
3. 振り返りの仕組み: 成長に気づく対話の工夫
1on1の進め方
1on1では、スプリントゴールへの進捗度合いを、信号機に例えて確認しています。具体的には以下のテンプレートを進めています。 各色の意味合いはあえて明確に決めず、メンバーに自分で考えてもらい、なぜその色なのかを説明してもらうことで、課題の理解に努めています。
# **yyyy/MM/dd** --- ## 信号の色はいかがですか? 赤、黄色、青、もうすぐ変わりそうなど教えてください! ## 今日特にテーマはありますか? - [ ] 仕事のパフォーマンス! - [ ] ワークライフバランス! - [ ] キャリア・転職・独立! - [ ] ぽじねの意見を聞きたい! - [ ] ゆるく話したい! - [ ] その他なんでも! ## 特に話したいこと - ## うまくいっている/いってないこと -
信号機の色を通じてコミュニケーションをとることで、アイスブレイクも兼ねて課題をはなしてもらうきっかけになっています。
振り返りの視点
月に一度のふりかえりでは、スプリントゴールを軸に以下の視点でふりかえりをしています。
1. タスクの進め方の工夫
- 今月、自分から進んで取り組んだ新しいタスクや役割はありましたか?
- その業務範囲の拡大がチームやプロジェクトにどのような影響を与えましたか?
2. 仕事の認知の工夫
- 今月直面した課題や困難は何でしたか?
- それにどう向き合い、成長のチャンスに変える工夫をしましたか?
3. 周りのメンバーとの関係性の工夫
- クライアントやチームメンバーとの関係をどう改善・強化しましたか?
- 来月は誰とのコミュニケーションを強化し、どのような新しい連携を築きたいと考えていますか?
この視点で振り返ると、日々の業務が「やったことの積み重ね」ではなく、自ら工夫して得た 「成長のプロセス」 として捉えられるようになりました。 どの領域(タスク、認知、関係性)で、どのような工夫をするかを対話し、次のアクションを明確にすることができるようになっています。
4. 成果と変化: 点から線へのコミュニケーションへ
個人のプロダクトバックログ管理を取り入れたことで、仕事が断片的な「点」として扱われることが多かったのですが、今ではビジョン達成への成長のプロセスも踏まえて「線」として見えるようになりました。
これは、毎月のスプリントゴールの進捗確認に加え、成果がプロダクトゴール(半年〜1年)やプロダクトビジョン(2〜5年)にどうつながっているかを話し合うようになったことが大きな要因です。
「今取り組んでいること」が「これからの成長」にどう結びつくのかを意識する対話が増え、業務が単発のタスク処理ではなく、キャリア形成に向けた積み重ねとして見えるようになりました。
5. 今後の課題と改善点: プロダクトバックログの運用を継続するために
この取り組みを2ヶ月程継続し、以下の課題が見えてきました。
- 一つのことに集中するため、やったことを網羅的に振り返ることが難しい
- マネージャーとメンバーで閉じているため、他のメンバーに意図が伝わらない
スプリントゴールに集中しながらも、月次の振り返りではゴール以外の取り組みにも目を向ける工夫や、他のメンバーとの共有を意識した工夫について模索をしています。 特にマネージャーからも支援を受けられる状態を作れれば、より効果的に業務的な成果と成長支援を実現できると考えているため、今後の課題として取り組んでいきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
*1:この例は架空のエンジニアを元にChatGPTに生成してもらいました。