はじめに
本記事は コネヒト Advent Calendar 2018 の25日目のエントリーになります。遂に最終回!メリークリスマス!
こんにちは。アルバルク東京🏀を応援している @itosho です。バスケットボールと言えばチームスポーツ!と言うわけで、今日はいつもと趣向を変えてチームビルディングにフォーカスを当てたいと思います。
コネヒトでは開発手法としてスクラムを導入しているのですが、チーム一丸となって「スクラム」を組んで開発を進めていくためにはチームビルディングが不可欠です。
僕は約1年前からスクラムマスターをやらせてもらっているのですが、チームビルディングをしていくにあたって最初はとても苦労しました。*1それは、チームビルディングに「銀の弾丸」はなく組織 / 現場毎に課題や状況の変数が異なるため、教科書通りにやってみても上手くいかないケースが多いからだと考えています。*2
それでも1年間続けてみてある程度形になってきた部分もあるので、本エントリーでは書籍を読んだり勉強会に参加したり他社さんの事例を聞いたりして、実際に僕がコネヒトで実践しているチームビルディングのワークショップを4つ紹介したいと思います。なお、それぞれのワークショップ単体でも一つの記事が書けるほど奥深いワークショップですので、今回は概要のみに留めさせていただきます。
KPT
最初に紹介するのはKPT(読み方: ケプト、ケーピーティー)です。こちらは日本のスクラム開発現場でも多く取り入れられている手法ですので、ご存の方も多いかもしれません。
KPTは振り返りのためのフレームワークで、流れとしてはまず最初に「Keep」としてよかったことや今後も続けたいことを挙げます。次に「Problem」として、よくなかったことを挙げます。そして、最後にKeepをよりよくする、もしくはProblemを改善する「Try」を挙げます。なお、挙がったTryを全て取り組むのは難しいことが多いため、取り組むTryは話し合って決めます。
KPTはフレームワークに沿えば比較的容易にプロセス改善のPDCAを回すことができ、また導入している現場も多いため、振り返りをしたことがない現場へ最初に導入するワークショップとして非常にお勧めです。
コネヒトでの利用シーン
- コネヒトでは最もよく利用されているワークショップで、主にスプリントの振り返りとして活用されています。
- また、みらい会議*3という全従業員が参加するような開発以外の会議でも活用されています。
注意点
- 取り組むTryについて、コネヒトでは多数決で決める*4ことが多いのですが、合議制で必ずしもよいとは限りません。ですので、Tryの優先度をきちんとチームで見極める必要があります。
- これはKPTに問題があるわけではないのですが、毎回同じ方法で振り返りをしていると飽きたり惰性で行なったりするようになってしまいます。ですので、コネヒトでは気分転換に違うワークショップを取り入れたり、KPT自体をカスタマイズしています。
様子
学習マトリックス
次に紹介するのは学習マトリックスという方法です。KPTと似ているのですが、名前の通りアウトプットがマトリックスとして表現されるのが特徴的です。
こちらも振り返りのためのフレームワークで、流れとしては最初に「Good」としてよかったことを挙げます。2つ目に「Change」として変えたほうがよいことを挙げます。3つ目に「Idea」として新しいアイディアを挙げます。そして、最後に「Thanks」としてメンバーなどに感謝したいことを挙げます。
プロセス改善のPDCAを回すという意味ではKPTと同様ですが、斬新なアイディアを出しやすいこととメンバーに感謝を伝えられるので、場が暖まりやすいワークショップでもあります。
コネヒトでの利用シーン
- KPTがマンネリ化している時の振り返りのワークショップとして利用されることが多いです。
- 具体的には Connehito Marché という社外向けの勉強会の振り返りによく利用されています。勉強会の振り返りは普段のスプリントでの振り返りとは異なり日々継続的に改善していくものではないので、労いや感謝の言葉を伝える「締め」の場にもなっています。
注意点
- 場が暖まりやすいワークショップなので、ややもすれば「なんとなくやった感」や「なんかいい感じ」で終わることがあります。ですので、やりっ放しにせず、きちんと次のアクションが打てるようにしましょう。
- KPTに比べると、あまり事例が多くない(少なくとも日本では)ので、振り返りに慣れていないと少し苦労するかもしれません。少なくとも、ファシリテーターは何故学習マトリックスを利用するのかを語れるようにしておくとよいと思います。
様子
ドラッカー風エクササイズ
3つ目に紹介するのはドラッカー風エクササイズです。ちなみに、ドラッカー風のドラッカーはかの有名な ピーター・ドラッカーさん から取られています。ドラッカー風エクササイズは一言で言うと、期待値調整と相互理解のためのワークショップです。
コネヒトでは 原案 を少しアレンジして運用しており、具体的にはワークショップの参加メンバーは以下の質問に答えながらワークショップを進めていきます。
- 自分の得意なこと
- 自分が期待されていること
- ◯◯さんに期待していること(チームメンバー全員)
これらの質問に答えることで、みんなが思っていることと自分が思っていることのギャップを認識することが出来ます。そして、チームとしてそのギャップを埋めていくことがこのワークショップの目的です。
コネヒトでの利用シーン
- コネヒトではまだお互いのことがあまり分かっていない新チームの結成時や新規プロジェクトの開始時によく利用されています。
- チームビルディングとの文脈ではないので本エントリーでは触れませんが、インセプションデッキの作成と同じくらいのタイミングで実施するのが個人的には好きです。
注意点
- 率直な発言を引き出すために、比較的心理的安全性の高さが求められるので、ファシリテーターは楽しくワイワイ出来るような場作りに努める必要があります。
- また、やりっ放しにならないようにこのワークショップで出た付箋などは普段から見えるところに置いておきましょう。
様子
スタート・ストップ・コンティニュー
最後に紹介するのは、スタート・ストップ・コンティニューです。実はこのワークショップはまだ1回しか試したことがないのですが、けっこう面白かったので最後に取り上げたいと思います。コネヒトでは振り返りのワークショップとして導入しましたが、それ以外のシーンでも活用出来るのではないかと考えています。
元ネタは僕が大好きなNetflixなのですが*5、コネヒトでは個人にフォーカスした振り返りとして実施しました。
具体的には下記の3つの項目をチームメンバー全員にフィードバックします。
- 始めて欲しいこと
- 止めて欲しいこと
- とてもうまくいっているので続けて欲しいこと
一緒に頑張ったチームメンバーから率直なフィードバックを貰うことで、次の仕事に活かすのが狙いです。
コネヒトでの利用シーン
- 先述の通りまだ1回しか試していないのですが、とある開発チームの最後の振り返りに利用しました。
- Netflixでは相手に改善して欲しいことがあれば、上長ではなく本人に面と向かって言うという文化が根付いていて素晴らしいなと思うので、コネヒトでも利用頻度を上げていきたいなと思っています。
注意点
- チームメンバーが充分にラポールを形成していたり信頼関係を築いていたりする必要があるので、プロジェクト初期では避けたほうが無難です。
- つまり、ドラッカー風エクササイズより高い心理的安全性が必要になります。個人的な工夫としては、チームメンバーに遠慮がないことと思いやりがないことは違うよ、というようなことを事前に伝えています。
様子
まとめ
さて、ここまで主にファシリテーターとして僕がよく実践しているワークショップを4つ紹介してきましたが、コネヒトではこれ以外のワークショップもたくさん実践しています。それは、コネヒトの開発メンバーが日々のプロセス改善をジブンゴト化しているからであり、その時々の状況にあった方法を模索しているからです。
冒頭でも述べたようにチームビルディングに「銀の弾丸」はありませんし、極論ですが、僕はチームビルディングの「How」は何でもいいと思っています。大切なのは、何故その「How」を取り入れるのか?その背後にどういう課題や問題意識があるのか?をきちんと自分で語れることだと思います。ただ有名な会社がやっているから真似してみたとか、教科書に載っていたから採用してみただけでは意味がありません。*6ですので、思考停止せず、自分たちに合った「How」を「Why」から考えることがよりよいチームをつくるための最初の「一歩」だと僕は考えています。
というようなことを、僕はスクラムマスターの経験を通じて、今年学ぶことが出来たので、2019年もコネヒトはよりよい開発組織になれるように引き続き試行錯誤していきたいと思います!